第10回未来をのぞく住宅展

周辺の環境や場の持っている力を読み取り、家族の要望やライフスタイルに相応しい個性的な住まいを創造し、利便性や快適性だけを求めるのではなく、周辺の風景や庭に植えられた緑、光や通り抜ける風などを感じながら心地良い豊かな空間をつくりたいと思います。

住まいは規模やコストに関係なく、住まい手らしさ、硬く言えば価値観が現れてきます。希望をお聞きし、機能、デザイン、コスト等、全てのバランスを取りながら住まい手のこだわりを形にしていくお手伝いが、建築家の仕事だと思っています。

１００組の家族には１００通りの家があると思います。それぞれの生活と夢を語る中から家のかたちを彫りだしていきたいです。

私達の生活には、情報が氾濫しています。何に指向し、何を選択すべきかを見失いかけているのではないでしょうか。家づくりは商品カタログの情報収集と商品選定で片付くものではありません。物欲や流行にとらわれることなく、自分たちの生活感（人の居場所・真の快適性）を問い直すことが、住宅には必要ではないでしょうか。

住宅では、坪単価45万〜120万迄の建築の経験をしました。そこで感じるのは、「いずれも住宅の本質は同じ。」という事です。住宅をデザインするという事は、形態・空間のデザインだけでなく、住まう人の生活スタイルや人間関係までもデザインしてしまいます。設計には、いつも謙虚な姿勢で臨みたいと考えています。

空間の心地よさは、数字や言葉だけでは表現できません。 流行の素材や嗜好に流されない、普遍的なクオリティを追求する事が重要だと考えています。

住宅とは、家族や人とモノ、環境との関係性を具現化する、そんな機能が詰まった容器だと考えています。生活スタイル全体をデザインすることを念頭に入れ、それに見合った素材、形状、質感などを検討します。いろんな場所でいろんな場面が展開する気持ちのいい、豊かで多様性のある空間をつくっていきたいと思っています。

その土地の風土や固有性を読み解きながら建築主や地域の人々に愛着を持っていただけるような、ぬくもりのある遊び心に満ちた建物を創りたいと思っています。

住まいはまず空間ありきだと考えています。 なぜならば設備的な利便性等は時と共にその都度対応が可能ですが骨格となる空間だけはなかなか後になって変えられる物ではないからです。そこに長く住んでその価値が実感できるような居住空間を目指しています。それが住む人にとって本当の快適性に繋がると僕は信じています。